紹興酒入門編:紹興酒とは?産地や原料、製法、種類、歴史などについて徹底解説

紹興酒

紹興酒とは

紹興酒(しょうこうしゅ)は、中国浙江省の紹興市で造られた醸造酒です。2000年に中国の地理的表示保護(GI認証)の第一号として選ばれ、フランスのシャンパーニュと同じように、紹興市で造られたお酒のみ紹興酒と名乗れます。また生産地域以外、法律に決められた原材料や製法を使用しなければいけません。

紹興酒は深い琥珀色をしており、独特の香ばしい香りとまろやかな甘み、コクがあります。アルコール度数は一般的に14°~18°程度で、ワインと近いですが、味わいはより複雑で奥深いです。味のバランスが良く、甘み、酸味、苦み、旨みが調和していることが特徴です。

紹興酒の産地:紹興市

紹興市(しょうこうし、Shaoxing)は、中国浙江省に位置する歴史的かつ文化的に豊かな都市で、特に紹興酒の産地として世界的に有名です。紹興市は長い歴史を持ち、風光明媚な自然環境や数々の文化的遺産を抱え、古代から中国文化の中心地の一つとして栄えてきました。

地理的位置

紹興市は、中国の東海岸に近い浙江省の北東部に位置し、杭州の南東約60キロメートルにあります。温暖な気候と豊かな水源が特徴で、米や小麦などの穀物が豊富に栽培され、紹興酒の醸造に理想的な条件を備えています。

歴史的背景

紹興市の歴史は古く、約2500年以上前に遡ります。古代中国の「越国」として知られたこの地域は、戦国時代には独立した国家であり、越王勾践(こうけん)の本拠地でした。越王勾践は、戦に敗れた後、強い国を築くために耐え忍び、後に再び栄光を取り戻したことで有名です。このような背景から、紹興は「忍耐と復興の象徴」として称えられることが多いです。

歴史を通じて、紹興市は政治、経済、文化の重要な拠点として栄え、多くの文人や詩人がこの地に集まりました。特に有名なのは、唐代や宋代の詩人たちが紹興酒を好んで詩に詠んだことです。これにより、紹興酒は文化的なシンボルともなりました。

紹興市の古い町の風景

紹興酒の原料

紹興酒に関する最新の国家基準(GB/T17946-2008)によって、紹興酒の原料はもち米小麦(麦麴)鑑湖(かんこ)の水のみを使用しないといけません。これらの原料が組み合わさり、発酵や熟成の過程を経て、紹興酒特有の香りや深い味わいが生まれます。

1. もち米

紹興酒の主原料はもち米です。もち米は、普通の白米と比べて粘り気が強く、発酵中に糖化しやすい性質を持っています。もち米の使用は、紹興酒に特有のまろやかな甘みとコクを与えるため、品質の良いもち米が使われることが多いです。もち米の品質が紹興酒の味わいに直接影響するため、原料選びは非常に重要です。

2. 小麦麹(こむぎこうじ)

次に、小麦麹が発酵の過程で使われます。小麦を発酵させて作った麹(こうじ)は、もち米に含まれるデンプンを糖に変える働きを持っています。この糖化のプロセスがアルコール発酵の前提となります。小麦麹が紹興酒の香りや風味の形成に重要な役割を果たし、発酵の進行を助けることで、独特の風味を生み出します。

3.鑑湖(かんこ)の水

紹興酒の製造に使用される鑑湖(かんこ)の水は、紹興酒の品質に大きな影響を与える重要な要素です。鑑湖の水は、非常にバランスの取れたミネラル成分を含んでおり、硬度が低く、やや軟水に分類されます。この軟水が、紹興酒の柔らかく滑らかな口当たりを生む一因となっています。また、鑑湖の水は長年にわたってその清浄さが守られており、非常に高い純度を持っています。そのおかげで雑味が少なく、酒の風味が際立ちやすいため、酒造りに理想的な条件を提供しています。

4.その他の成分

発酵を進めるために用いられる酵母は、酒のアルコール度数や香りを決定する重要な役割を持ちます。現地では発酵の際に用いる酵母(酒母)は一般的「酒薬(しゅやく)」と呼ばれています。紹興酒の製造では、地元の伝統的な蔵付き酵母が使われることが多いです。

最後、キャラメル色素は紹興酒を出荷する前に製品の色合いを均一に調整するために、唯一法律に認めた添加物です。紹興酒の色合いとキャラメル色素はまた別の文章に詳しく説明します。

紹興酒の製法

紹興酒の製法は、伝統的な中国の醸造技術に基づいており、主に以下の工程から成り立っています。紹興酒の特徴的な風味は、厳密に管理されたこの製法によって生まれます。

1. 原料の準備

紹興酒の主な原料であるもち米を精米し、水に付けてお米にたっぷり水を吸わせます。使用されるもち米は特に重要で、品質の高い米が選ばれます。

2. もち米の蒸し

もち米は十分に水に漬け込んだ後、大きな蒸し器で蒸されます。この工程で米が適度に柔らかくなり、発酵に適した状態になります。

3. 仕込み

口が広い大きな甕に蒸しあがったもち米と小麦麹を加えます。麹は、米のデンプンを糖に変換するための酵素を含んでおり、発酵のプロセスに欠かせない要素です。

4. 発酵

発酵は、米の糖分が酵母の働きによってアルコールと二酸化炭素に変わるプロセスです。酒薬(酵母)を投入して麹を加えたもち米を発酵させます。多くの場合発酵は二回に分かれます。一回目は500Ⅼほど大きな甕(かめ)や専用の発酵タンクが使われます。二回目は下の写真のような23Ⅼほどの小さい甕に移して2~3ヶ月をかけてゆっくり発酵させます。これにより原酒が作られます。発酵の際に望ましくない雑菌の繫殖を防ぐために、伝統からは気温が低い冬の季節に行います。

5. 圧搾(あっさく)

発酵が完了すると、発酵液を圧搾して、酒を搾り出します。この時に出る液体が紹興酒の原酒です。圧搾により、固形物と液体が分離され、澄んだ酒が得られます。その後、原酒に含まれる色んな微生物の働きを止めるために、火入れという加熱殺菌を行うのは一般的です。

6. 熟成

搾り出された原酒は、次に熟成工程に入ります。紹興酒の熟成には、陶製の甕が使われます。甕の中で酒が長期間熟成されることで、風味が深まり、独特の色や香りが生まれます。熟成期間は通常1年以上ですが、高品質の紹興酒は10年以上熟成されることが多いです。

7. ブレンド(調合)

熟成が終わった酒は、異なる熟成期間や特徴を持つ酒をブレンドすることがあります。これにより、安定の品質や風味を保つことができます。ブレンドの技術は紹興酒の製造において非常に重要です。

8. 最終調整と瓶詰め

ブレンドが終わった酒は、ろ過され、必要に応じて水やキャラメル色素で調整し、一定の色合いや風味に仕上げます。最終的に瓶詰めされ、市場に出荷されます。

このように、紹興酒は長期間にわたる複雑な工程を経て製造されるため、非常に手間がかかる酒です。その結果、深みのある味わいと香りを持つ独特の飲み物が完成します。

紹興酒の種類

現行の国家基準では、紹興酒の残糖の量と製法によって4種類に分かれています。

1. 元紅酒(げんこうしゅ)

元紅酒は、紹興酒の中で最もドライな種類です。「元紅」とは、昔の酒瓶が赤い封印で封じられていたことから名付けられました。この種類の紹興酒は、主に1年から3年程度の短期間熟成され、比較的フレッシュで軽い味わいが特徴です。

  • 残糖:15g/L以下
  • 味わい:やや辛い、フルーティーで軽やかな風味。
  • 使用用途:食前酒や料理用。

2. 加飯酒(かはんしゅ)

普段飲まれている紹興酒のほとんどは加飯酒です。加飯というのはアルコール発酵の途中にお米と麴を追加で投入することです。元紅酒に比べてもち米の使用量が多く、3〜5年の熟成を経て作られます。より濃厚でしっかりした風味が特徴で、元紅酒よりも甘みが強く、アルコール度数もやや高いことが多いです。

  • 残糖:15g/L~40g/L
  • 味わい:深みがあり、甘味と旨味がバランスよく調和。
  • 使用用途:食中酒としてもよく合います。

3. 善醸酒(ぜんじょうしゅ)

善醸酒は日本酒の貴醸酒とよく似ています。仕込み水の代わりに、元紅タイプの紹興酒を使用して造った物です。もろみの中の糖分とエキスが一部残るため、濃厚な味わいと豊かな香りが特徴です。糖度が高く、甘口の紹興酒として知られています。

  • 残糖:40g/L~100g/L
  • 味わい:甘くて濃厚で、デザートワインのような風味。
  • 使用用途:食後酒やデザートと合わせて楽しむ。

4. 香雪酒(こうせつしゅ)

紹興酒の中で最も甘いタイプです。酒精強化ワインと同じような製法で、仕込み水の代わりに、紹興酒の絞り粕から造った「粕取り焼酎」を添加し、アルコール発酵を止めます。そのためもろみの中の糖分がたくさん残し、極甘口タイプの紹興酒になります。

  • 残糖:100g/L以上
  • 味わい:上品な香りで、リキュールのような甘み。
  • 使用用途:食後酒やチーズ、デザートと合わせて楽しむ。

紹興酒の歴史

紹興酒の歴史は非常に古く、中国文化と深く結びついています。その歴史は約2,500年以上前に遡るとされています。

起源と古代の歴史

紹興酒の製造は、約2,500年以上前中国の春秋戦国時代(紀元前770年〜紀元前221年)にはすでに始まっていたと考えられています。古代中国では、酒は宗教儀式や祭祀で重要な役割を果たし、神々への供物として捧げられていました。この頃、紹興地域は稲作が盛んで、米を主原料とした酒造りが行われるようになりました。特に紀元前490年頃の記録に、紹興酒の前身とされる酒の存在が記されています。

唐・宋代の発展

紹興酒が本格的に広まったのは、唐代(618年〜907年)から宋代(960年〜1279年)にかけてです。この時期に、紹興酒の製造技術が大きく発展し、特に宋代には「女児紅」や「元紅」といった現在の紹興酒に近い種類が作られるようになりました。紹興酒は宮廷や貴族の間で愛され、また文人や詩人たちにも好まれました。彼らは詩や文章の中で紹興酒を讃えることが多く、その名声が広まりました。

明・清代の成熟

明代(1368年〜1644年)から清代(1644年〜1912年)にかけて、紹興酒の製造技術はさらに洗練され、現在知られている様々な種類の紹興酒が確立されました。この時期には、紹興酒の貯蔵や熟成技術が発展し、長期熟成によって得られる深い風味が評価されるようになりました。また、清代には商業的な酒造業が発展し、紹興酒が中国全土に広まるとともに、貿易を通じて国外にも輸出されるようになりました。

現代

20世紀に入ると、紹興酒は中国国内のみならず、世界中に広まりました。紹興市は現在でも中国における黄酒の一大生産地であり、伝統的な製法を守りながらも、現代の技術を取り入れた生産が行われています。紹興酒は、料理用としてもそのまま飲む酒としても高い評価を受けており、国際的な酒類コンテストでも数々の賞を受賞しています。

最後にプラスワン

お疲れ様です!ここまで読んでいただければ、あなたも紹興酒に詳しい人になりました。

文章の最初にも言いましたが、紹興酒は中国の地理的表示保護(GI)の製品です。そのため紹興酒のボトルや化粧箱に下記の認証マークを掲載することができます。現在紹興市で法律の基準を満たした14の酒造メーカーの商品以外は紹興酒と名乗ることができないのです。普段紹興酒を購入する際に下の認証マークがあるか確認してみるのがよろしいと思います。マークがあればより一層安心だと思います。

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