前半の記事では中国の「白酒」、「黄酒」、「啤酒」(ビール)について紹介しました。今回は後半として「紅酒」、「果酒」、「薬酒」の3種類について簡単解説します。
4. 紅酒(ホンジュウ /CN: Hóngjiǔ)
「紅酒」は文字通りに「紅色のお酒」です。日本の皆様にとっても非常に身近なお酒です。
さてここでクイズ:「紅色のお酒」と言ったら何でしょうか?
ヒント:中国語には色を使った名称が多く、緑茶(緑色の茶)や白酒(透明なお酒)など、色で飲み物を表現する文化が根付いています。そのため、「紅酒」という表現は自然で、分かりやすいものです。
正解は「赤ワイン」です。
中国では「ワイン」=「赤ワイン」なの?
中国で「ワイン」を指す場合「紅酒(ホンジュウ)」という言葉が広く使われています。つまり、中国で「ワイン」と言ったら、一般的には赤ワインを指すことがほとんどです。日常会話やレストランで「ワインを飲もう」と言った場合、相手が特に明示しない限り、多くの人は赤ワインを連想します。
その背景として、中国市場では赤ワインが圧倒的な人気を誇り、赤ワインと白ワインの割合は大きく偏っています。具体的な数字は年によって多少異なりますが、赤ワインが全体の約80〜90%を占め、白ワイン(CN.白葡萄酒)やロゼワイン(CN.桃红葡萄酒)などは合わせて約10〜20%という構成です。
赤ワインが人気の理由
- 文化的要因: 中国文化では「紅」という色には非常に重要な意味があります。赤は伝統的に幸運、繁栄、喜び、祝福を象徴する色とされています。結婚式や新年などの祝祭行事において、赤色が頻繁に使われます。そのため、赤ワインは祝い事や贈り物にもよく使われます。
- 健康志向: 「フレンチパラドックス」の説から、赤ワインには抗酸化物質であるポリフェノールが豊富に含まれており、これが健康に良いとされているため、特に健康志向の高い中国で人気があります。また、中国では古くから体を冷やす=不健康のイメージがあるため、冷やして飲む白ワインやスパークリングワインは注目されませんでした。
- 食文化との相性: 中国料理は濃厚でスパイシーな味付けのものが多く、赤ワインがその風味とよく合うとされています。特に北京ダックや濃いソースを使った料理には、オーストラリアやアメリアの味が濃い赤ワインが好まれます。
- 歴史的背景:中国で本格的にワインを輸入し始めた1990年代はボルドーワインの全盛期のため、赤ワインが一気に中国市場で広まりました。
中国でワインを造っているの?
はい!現在中国ではワインの生産が盛んに行われています。
中国は世界上位のワイン消費国で、欧米からの輸入ワインが主流ですが、国内産のワインが急速に発展しています。近年ワイン文化や醸造技術の進歩に伴って品質は急速に向上し、国際市場でも注目を集めています。特に寧夏などの地域では、国際的なワインコンペティションで受賞するワインも多く、注目を集めています。外国からの技術導入や、フランスなどの名門ワイン生産者との提携も多く見られます。
主要なワイン産地
中国にはいくつかの主要なワイン産地があります。各地域の気候や土壌が異なるため、そこで生産されるワインにも特徴があります。
- 寧夏回族自治区(Ningxia):黄河流域に位置し、日照量が多く、標高の高い地域。カベルネ・ソーヴィニヨンなどの赤ワインが有名。
- 山東省(Shandong):海に近く、湿度が高いが気候は温暖。白ワインと赤ワインの両方が生産されている。
- 新疆ウイグル自治区(Xinjiang):乾燥した気候で、砂漠地帯でも栽培が可能。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローが栽培されている。
- 河北省(Hebei):北京の近くにあり、中国でいち早くワインの醸造技術を研究した産地です。フランス政府との「ワイン醸造実証農場」プロジェクトがあります。
5. 果酒(グオジュウ /CN: Guǒjiǔ)
「果酒」も文字通りに果物のお酒です。多くの場合は果物を原料とした甘口のリキュールです。
果酒は特に女性や若年層の間で人気があります。多くの果酒は、単なる飲み物としてだけでなく、漢方薬としての効能も期待されています。例えば、梅酒は消化促進や食欲増進に、桑の実酒は血液の循環を良くするため、健康維持に役立つとされています。
主なタイプ
- 梅酒: 梅の果実を使った甘酸っぱい果実酒。
- 桑の実酒(CN.桑葚)桑の実を使ったお酒で、フルーティーな味わいと深い赤色をしていることが多いです。
- 山楂酒(サンザシ酒): サンザシの果実を使った酒で、甘酸っぱい風味が特徴。
- クコ酒: クコの実を使った健康志向の酒。
中国以外にもフルーツ大国で、果酒の種類はとても多いです。近年ではフルーツだけでなく、ジャスミン茶や烏龍茶などお茶の風味も加える商品が出ています。
6. 薬酒(ヤオジュウ /CN: Yàojiǔ)
薬酒は、ヨーロッパの修道院などで造った伝統的な薬草リキュールと同じように漢方薬としての効果があるとされる薬草や動物由来の材料をお酒(通常は白酒や黄酒)に漬け込んで作られる伝統的なお酒です。
薬酒は古代から中国医学の一部として利用され、滋養強壮や病気の予防、体調改善のために飲まれてきました。薬酒の原料には、さまざまな植物や動物由来の成分が含まれており、それぞれが特定の健康効果を持っていると信じられています。
主なタイプ
- 滋養強壮酒: 人参や鹿茸(ロクジョウ)などを使った、体力増強や滋養を目的とした薬酒。
- 関節痛用薬酒: 虎骨(ここつ)などの薬材を使用し、関節痛や筋肉の緩和に役立つと言われています。
- 風邪予防薬酒: 冬虫夏草(とうちゅうかそう)など免疫力を高める薬材を使ったもの。
薬酒は、健康に対する意識が高い中国文化の一部として、飲む目的や効果に応じて多様なバリエーションがあります。
現代の中国では、薬酒は昔ほど日常的に消費されなくなりましたが、特に健康志向の高い人々の間で今なお人気があります。伝統的な薬酒だけでなく、企業が製造する商品化された薬酒も数多く販売されています。例えば中国で非常に知名度が高い「中国勁酒」、近年日本でも買えますので、出会ったら味見してみるのはいいかもしれません。
また、地域によって一部の人々は、薬酒を自宅で作ることもあります。これは自分の体調に合わせて薬草の組み合わせを選べる利点があります。特に農村部や伝統を重んじる家族の中では、今も薬酒を手作りする習慣が続いています。次の写真は実際にえんくんが貰った自家製の薬酒です。ラベルの「私蔵」はプライベートコレクションの意味で、色も漢方薬っぽい黒に近い醬油色です。未だに飲む勇気がなくて、まだ開けていないです(笑)。
コメント