中国の土着品種?「蛇龍珠(カベルネ・ゲルニッシュト)」

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今回は中国ワインによく使われるブドウ品種「蛇龍珠Cabernet Gernischt(カベルネ・ゲルニッシュト)」について紹介します。実は中国でも「蛇龍珠」に関する情報が少なく、記事によって矛盾している情報も少なくありません。本文は資料だけでなく、長年中国でワインを醸造しているワインメーカーさんにも色々質問しました。

歴史と起源

  • 中国への導入:蛇龍珠は1892年に「張裕(チャンユー)葡萄醸酒公司」によってフランスから中国に導入されました。当初はカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)やカベルネ・フラン(Cabernet Franc)の姉妹品種と考えられていました。
  • 名称の由来:「Cabernet Gernischt」という名称は、ドイツ語の「Cabernet Gemischt」(混合されたカベルネ)の誤表記である可能性があり、長い間でカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの交配品種だと思われていました。
  • 遺伝子研究:2008年の寧夏大学の研究と2011年のスイスの科学者José VouillamozによるDNA解析により、蛇龍珠はカルメネール(Carmenere)と遺伝子的に同一であることが確認され、中国に適応したカルメネールの変種である可能性が示されました。

つまり、現在最も有力な説は、「蛇龍珠」は「カルメネール」と同じ品種です。しかし、100年以上中国で栽培している間で、中国の気候風土に適応して独自の特性が生み出され、一部の専門家から蛇龍珠は中国の土着品種に認定すべきの声も上がっています。

品種の特徴

寧夏賀蘭山東麓の蛇龍珠ブドウ
  • 外観と成長:蛇龍珠の果実は紫黒色で、比較的小さく、紫黒色をしており、房は中程度の大きさです。果皮について薄いと厚い両方の資料がありますが、各産地のワインメーカーによると地域によって厚さが異なることがわかりました。例えば新疆ウイグルの天山北麓産地ではカベルネ・ソーヴィニヨンの皮より厚いです。果実が成熟すると、濃厚な果実の香りを放ち、カシス、チェリー、プラムなどの黒系果実のアロマが感じられます。
  • 成熟期:蛇龍珠は中晩熟品種で、芽吹きから果実の完熟まで約138日かかる。カベルネ・ソーヴィニヨンより早く、9月上旬から収穫し始めます。
  • テロワール適応性:蛇龍珠は中国の土壌や気候に対する適応力が高く、山東、寧夏、河北、新疆ウイグルなど中国多くの地域で栽培しています。

ワインの特性

  • 典型的な香り:蛇龍珠のワインは、ピーマン、カシス、ラズベリー、赤系果実、黒胡椒、ハーブ、マッシュルームなどの香りを持っています。
  • ワインのスタイル:ミディアムボディで、タンニンは繊細、酸味は活き活きとしており、ジューシーな口当たり。赤系果実や甘いスパイスの複雑な風味が特徴です。
  • カルメネールとの違い:遺伝的にはカルメネールと同一だが、中国の風土に長年適応した結果、チリ産のカルメネールとは異なるワインスタイルを持っています。

よく言われる「薬草や漢方のような香り」の要因

蛇龍珠で造られた中国ワインはよく薬草や漢方、あるいは強いドライハーブのような香りを感じられます。実際に中国でワインスクールの講師やワインショップの店員も「蛇龍珠=漢方の香り」と説明する方もたくさんいます。しかし、私の経験上、漢方の香りのない非常にフルーティーな蛇龍珠ワインもいくつか飲んだことがあります。今回は様々な資料とワインメーカーの回答を集めて、漢方のような香りを徹底的に調査しました。

ブドウ品種の遺伝的特性

遺伝子研究によると、蛇龍珠はカルメネール(Carmenere)とDNAが同一であるものの、中国の風土に適応する中で独自の生物型を形成しました。この遺伝的背景が、香りの基本要素を決定しています。

  • 典型的な香気成分:蛇龍珠には、2-メトキシ-3-イソブチルピラジン(2-Methoxy-3-isobutylpyrazine)などのピラジン類が含まれており、青ピーマンやハーブの香りの主要な要因となっています。
  • 代謝産物の違い:チリ産カルメネールと比較すると、中国の気候に適応した蛇龍珠は、遺伝子発現の変化により、テルペン類やC13ノルイソプレノイドといった草本系の香り成分をより多く生成する可能性があります。

テロワール(風土)の影響

蛇龍珠が主要に栽培される山東省煙台や寧夏賀蘭山では、独特の気候・土壌条件が草本系の香りを強める要因となっています。

  • 砂質土壌と乾燥環境:蛇龍珠は痩せた砂壌土で栽培されることが多く、根がミネラルを吸収しやすくなります。これにより、フェノール類や香気前駆物質が果実内に蓄積し、青草やハーブの香りを強化します。
  • 昼夜の寒暖差と日照:寧夏賀蘭山の気候では日中の強い日照と夜間の冷え込みが特徴で、成熟がゆっくり進むことで、草本香がよりはっきりと表れる傾向があります。

病害による香りの変化

特定のブドウ病害が、蛇龍珠ワインの香りに影響を与えることが研究で明らかになっています。

  • 巻葉病(Grapevine Leafroll Disease)に感染したブドウ:この病害に感染すると、通常優勢な果実香や花の香りが減少し、甘草や陳皮のような薬草の香りが強くなります。

醸造技術による香りの調整

草本の香りはブドウの特性に由来しますが、醸造工程によってその表れ方が調整されることもあります。

  • 低温浸漬と発酵温度:低温浸漬を行うことでピラジン類の揮発を抑え、青っぽさを強調することができます。一方、高温発酵ではエステル化が進み、果実香が際立ち、草本系の香りがやや和らぐ傾向があります。
  • オーク樽熟成の影響:オーク樽による熟成では、バニラやスモーキーな香りが加わるため、草本の香りが相対的に目立たなくなります。一方で、オークを使わない場合、草本香がより明確に感じられます。

ワインメーカーさんと話してみると、上記の原因の中で最も関係するのは栽培管理だと思われます。しっかり栽培管理を実施し、ブドウの成熟度を十分確保できれば、薬草や漢方のような香りがだいぶ少なくなるはずです。

最後にプラスワン

世界蛇龍珠の日:2016年、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)は5月25日を「世界蛇龍珠の日」と定め、この中国特有の品種を国際的に推進しています。

私が一押しの中国蛇龍珠ワイン:唐庭霞露の蛇龍珠。果実味が豊富で、漢方のような香りが全然なく、非常に高い成熟度が感じられます。

唐庭霞露の蛇龍珠、ラベルのデザインは虎符(こふ)です。

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