中国のボルドーとも言え、近代化ワイナリー誕生の地
プロフィール
山東省は中国の華北地方に属し、北京や天津の南に位置します。ワイン産地の90%以上は東部、膠東半島(こうとうはんとう)の海沿いにあります。主に煙台市と青島市に集中しています。特に煙台市の蓬莱区では高品質なワインが多く生産され、非常に注目を集めています。山東省は中国で最も重要なワイン産地とも言えます。2019年のデータによると山東省のワイン生産量は11.4万kl、中国全土の四分の一を占めていおり、ワインの生産量と売上高はともに国内最多になります。
気候風土
「山東」は「太行山脈の東」という意味から由来し、全体的に平原が多いです。しかし膠東半島(こうとうはんとう)に入ると、中心部は山や丘陵が多く、平原のほとんどは海の沿岸に分布しています。ブドウ畑の大部分は水はけのいい丘陵に位置し、特に南向きの斜面が好ましいです。
膠東半島(こうとうはんとう)は海洋性気候で、年間の平均気温は11℃~14℃です。渤海と黄海の温度調節の効果によって冬も暖かくて、垣根の土寄せはしなくても大丈夫だそうです。年間の平均降雨量は550ml~950mlで、雨は6月から8月に集中しています。土壌は主に砂質土壌で、水はけが良く、ブドウの根が深く張るのに適しています。また、土壌のミネラル含有量も高く、これがブドウの風味に影響していると思われます。年間の平均日照時間は約2500時間、温暖な気候と長い日照時間がブドウ栽培に適しています。地元では太陽(SUN)、砂(SAND)、海(SEA)という「3S」の風土に誇ってブドウ栽培とワイン生産に携わっています。
山東省の緯度は北緯34°~38°です。その中で近年注目を集めている「蓬莱区」の緯度は北緯37°、メドックの北緯44°よりだいぶ南に見えるが、寒流の影響によって気候はボルドーに似ているようです。生産者の中でもボルドーワインを意識してワイン作りを行っているところが多いです。
歴史
19世紀後半にドイツ人宣教師によってブドウ栽培とワイン醸造が導入されました。そのため山東省ではワインだけでなく、日本でもよく見られる「青島ビール」など、ドイツ文化の影響が多く見られます。1892年、煙台に中国近代最初のワイナリー「张裕(CHANGYU)」が成立しました。今まで何度も倒産の危機に直面したが無事克服し、現在はアジア最大級のワインメーカーまで成長しました。そして、张裕(CHANGYU)は1894年から11年をかけてアジア最大級の地下ワイン貯蔵庫を建設しました。その地下セラーの一部は現在「ワイン文化博物館」として改造し、一般開放しています。
1990年代に入ってから、「GB/T 15037-1994」というワインの国家基準の発表によって全国で辛口の赤ワインがブームになりました。そのきっかけで山東省、特に蓬莱区のワイン生産者は先駆けてワインの量より質の方に追求するようになりました。
さらに近年中国国内の投資にかかわらず、国際資本から山東省でワイナリーを投資するケースも増えています。その中で特筆すべきのはフランス最大のワインメーカー「カステル・フレール」グループとCHANGYUが合同出資した「Chateau Changyu Castel」、もう一つはシャトー・ラフィットを所有している「ドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト・ラフィット」が出資した「Domaine de Long Dai」です。
主なブドウ品種
山東省に栽培しているブドウ品種について、黒ブドウは中国特有の蛇龍珠(カベルネ・グルナッシュ)以外に、カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、シラー、マルスランなどの国際品種も植えています。白ブドウはイタリアン・リースリング(=Welschriesling)、シャルドネ、ユニ・ブラン、プチ・マンサンなどはが栽培されています。
※ちなみに、山東省のワイナリーは今までボルドーを意識していることが多く、ワイン醸造のスタイルだけでなく、ボルドー風の立派なシャトーを建つところも多いです(笑)。
张裕卡斯特酒庄(Château Changyu Castel)
西夫拉姆酒堡(Château Saflam)
君顶酒庄(Château Junding)
九顶庄园(Château Nine Peaks)
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